「座りすぎ」は死を近づける!?この話、嘘じゃないんです。

2018 / 09 / 26
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授 岡 浩一朗さん

皆さんは、デスクワークをしているなかでずっと座っていることはありませんか?
実はその「座りすぎ」は自分の身に危険を及ぼしている可能性があるそうです…はたして一体なぜなのか…

今回は「座りすぎ」の疑問を解決するべく、「座りすぎ」の健康リスクについて研究している、早稲田大学スポーツ科学学術院教授・岡 浩一朗(おか こういちろう)さんにお話をお伺いしてきました!

岡浩一朗さんプロフィール
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。博士(人間科学)。
1999年、早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程を修了後、1999年より早稲田大学人間科学部助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター研究所)介護予防緊急対策室主任を経て、2006年より早稲田大学スポーツ科学学術院に准教授として着任。2012年より現職。

「座位時間は7時間」座りすぎの国、日本

「座りすぎは問題だ」というニュースを最近耳にするのですが、日本人はどれぐらいの時間座っているのですか?

岡先生
こちらのグラフをご覧ください。

現在、公表されているデータでは、日本人は1日当たり約7時間座っている人が最も多いというデータがあり、世界各国と比べて、座位時間が1番長い国と言われています。

また、私たちが、加速度計という、人の動きを感知できる機器を使って調査をしたところ、1日の装着時間(約15時間)のうち、約6割の時間は座っているというデータが得られました。

睡眠時間を含めると、人が立って動いている時間は少ないんですね…

岡先生
また、仕事形態によって、座位時間はさらに変わってきます。
「デスクワーカー」「立ち仕事」「歩き回る仕事」「力仕事」と、4つの仕事形態別に分析を行ったのですが、勤務日に「デスクワーカー」が座っている時間が断トツで多いという結果が出ています。

さらに注目をしてほしいのは、勤務時間内の座位時間の割合です。圧倒的に座っている割合が多く、その割合は約7割に上ります。

実はこのデータなのですが、そもそも調査対象の350人のうち7割の人がデスクワーカーでした。
この傾向は、パソコン1台の作業でほとんどの仕事が網羅できるようになっている、現代の日本の働き方を示しており、今後もこういった電子ネットワークの発達によって、さらにデスクワーカーの割合が増えていくと思われます。

さらにパソコンの知識に関しては、20代をはじめとした若い方がより長けていると思うので、一層座りすぎは身近な問題になると思います。

自分も記事を執筆したりすると、自然と座る時間は長くなっていると思います…

岡先生
そうですよね。
あとは仕事が終わって私生活に置き換えたときを考えてみてください。

私たち中高年より上の世代は、仕事が終わって家に帰っても、不便なことがたくさんありました。
例えば、テレビのチャンネルを変えるときは、テレビ自体にしかチャンネルのスイッチがついていなかったので、わざわざ立ち上がって、チャンネルを変えたりしていました。
洗濯をするときは、脱水・乾燥をすべて手動で行ったり。常に家の中でも動くということがありました。

しかし、今はどうでしょうか。
チャンネルはリモコンを使って変えることができ、洗濯機に至っては洗濯物を畳んでくれる乾燥機ですら出てきました。
一番体を動かす家事であった掃除に至っては、もうスイッチも何も押さなくても、自動で掃除してくれるロボットが出てきて、本当に体を動かす機会が少なくなってしまいました。

極めつけは、喋るだけですべての家電を動かすことができる仕組みまで開発されて、指先を動かすことですらもやめようとしています。

実際、豊かな生活や文化・便利さを得たのかもしれないですが、その一方で「健康」というものを失っているのではないかと思います。
その為にも人はやっぱり動かないといけないと思いますね。

「座りすぎ」は健康も生産性も悪くする

座っている時間が長いことで、身体にはどのような影響があるのでしょうか?

岡先生
こちらの図をご覧下さい。

長時間の座りすぎは、重力がかかる影響で姿勢が悪くなってしまいます。
そうすると体に流れる血流は悪くなり、血圧が高くなるような状態となり、最終的には心臓病などを患う可能性が高くなってしまいます。

さらに人間の筋肉の約70%は下半身に集まっているので、そこが動いていないということが、代謝の機能を悪化させ、肥満や糖尿病などの健康リスクを引き起こしているのではないかと言われています。

先ほど「デスクワークが座りすぎている」とお話しましたが、この話に続くものです。

昔は、「書類にハンコを押してください」とか「資料をチェックしてください」という理由で頻繁に立って動いて、さらに動いた先で立ちながらコミュニケーションをとるということが行われていました。
しかし今はメールでコミュニケーションをとるようになり、より効率的に仕事をすることが求められるようになってきて、非効率なことをしないということが正義という風潮にもなっていたりします。

それを追い求めてか、人間工学もいかに座った状態で楽に仕事ができるかを考えて、より快適な椅子を作ったりしました。
しかしそれは健康リスクを回避するという意味ではあまり効果がないことであって、結果として座る時間を長くしてしまい、健康リスクを高めてしまっています。

悪循環が生まれてしまっているんですね…。他にはどのような影響があるのでしょうか?

岡先生
他には仕事のパフォーマンス(生産性)やワーク・エンゲイジメント(働き甲斐)にも影響してきます。

20~50代の働いている方に、「仕事中に座っている時間(割合)」と「最近の生産性(仕事の効率)は良かったか悪かったか」を聞いてみました。その結果、座っている時が長いと回答した20~30代は短いと回答した方に比べて、生産性が悪いと思っている方の比率が約4割も多いという結果が出ています。

一方、ワーク・エンゲイジメントに関して、40~50代は、仕事中に座っている時間が多い方は短い方よりも、集中できず、仕事に対する「活力」や「熱意」、そして「没頭」があまりできていないと回答した方が約4~6割も多いというデータが出ました。
このことから、「朝から長時間ずっと座って仕事をしていると、夕方ぐらいには活力が少なくなってきてしまい、どんよりとした気持ちになっているからこそ、生産性が悪くなっているのではないか」という推測ができます。

それが溜まりに溜まってしまい、「いきいきと趣味に使う余力が残っていない」という感じが、座りすぎのワークスタイルだと思います。
その為にも、運動をすることで筋肉のスイッチを入れてあげて、血液の循環を良くしてあげることがとても大事で、からだの健康もさることながら、メンタルヘルスまでも影響していると思います。

ほんの少しの運動が、健康リスクを抑えてくれる

1 2 3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

PICK UP