カカオと砂糖だけで作る「ビーントゥバー」。東京発の「新しい」チョコレートと、知られざるカカオの真実とは?

2018 / 09 / 26
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Minimal Bean to Bar Chocolate 田淵康佑(たぶちこうすけ)さん

いま話題の「Bean to bar(ビーントゥバー)」チョコレート。カカオ豆(Bean)から板チョコ(Bar)になるまでの製造工程を一貫して行うチョコレートのことで、世界中で人気が高まっています。
今回お話を伺ったのは、今回お話を伺ったのは、日本のビーントゥバーチョコレートブランドとして、世界最高峰の品評会でも金賞を受賞されたMinimalの田淵さん。
私たちにとって馴染みのあるはずチョコレートには、知らないことがたくさんありました。

チョコレートを「新しく」する

Minimalのコンセプトを教えてください。

田淵さん
ブランドのビジョンは「チョコレートを新しくする」ことです。
「産地」、「ものづくり」、「お客様への提案」の3点をもってチョコレートを新しくしていこうと思っています。
田淵さん
Minimalのブランド名は「最小限の」という意味です。今まではカカオ自体よりも、香りやフルーツを組み合わせてつくられる一粒の味わいだったり、アートなデザインがチョコレートの価値でしたが、チョコレートの一番ミニマムな素材であるカカオを追求し、なるべくシンプルな作り方でカカオを引き立てるという想いを込めたブランド名です。

産地を「新しく」する

田淵さん
生産者からすると、カカオは必ずしも稼ぎの良い産業ではなく、背景には、根深い歴史があります。もともと、メキシコで栽培されていたカカオを大航海時代にスペイン人が「発見」し、現地でも高級品として扱われていたカカオを自国に持ち帰ったら流行ったというのが、チョコレートの始まりです。
そこから、ヨーロッパのいろんな企業がチョコレートを作り、カカオの需要が高まりました。その需要を満たすために、彼らの植民地であったアフリカやアジアの国でもカカオを植えさせたんです。
田淵さん
当時のヨーロッパは産業革命を迎え、大量生産ありきの時代でもありました。カカオに砂糖やバニラ、ミルクを加えて味を調整し、大きな機械で大量にチョコレートを作るので、カカオの品質はあまり考慮されていませんでした。強制的に始まったカカオ産業では、「良いカカオって何ですか?」という議論がないままスタートしたため、初めから入植者側と生産者側のギャップがありました。
植民地の奴隷を強制的に働かせて安い値で買い取り、添加剤を加えて既製品をおいしくするという前提ができてしまったので、カカオの値段はずっと安いままでした。

その経済の延長で、現在もカカオは先物取引になっています。生産者の努力とは関係のないところで、大資本のもとに値段が決まる仕組みです。なので、生産者の選択肢はひとつしかありません。大量に作って決まった値段で買い取ってもらうしかないのです。
日本の農業では、スーパーに売る農作物を大量に作る人もいれば、三ツ星レストランに少量で卸すための農作物を作る人もいて、売り方を選べる選択肢があります。カカオ農家さんにも同じように、選択肢が増えることが大事だと考えているので、まずは現地に行ってチョコレートの試食をし、管理の仕方で味が変わることを感じてもらうんです。

カカオをしっかり管理すると、味わいがあっておいしいチョコレートが作れます。おいしいチョコレートを作るためには良いカカオが必要で、良いカカオを仕入れるためには農家さんと一緒にカカオを作っていく必要があります。

品質管理のノウハウを共有し、良いカカオができたら高い値段で買い取り、おいしいチョコレートを作ってお客様に届けると、チョコレートがもっと売れたり、アワードを取ったりして、カカオを良い値段でもっと買うことができるというサイクルができます。すると、農家さんとも信頼関係が生まれ、モチベーションもあがると思うんです。味を良くするためには5年、10年とかかってしまうので、農家さんがモチベーションを維持しながら継続的に品質を高めていくことが大切だと考えています。

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