「いまの和菓子」って?可能性を追求する1代目にインタビュー

2018 / 07 / 28
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wagashi asobi 稲葉基大(いなばもとひろ)さん 浅野理生(あさのりお)さん

今回お話を伺ったのは、東京都大田区にある、今話題の小さな和菓子屋さん「wagashi asobi」の稲葉さんと浅野さん。業界では「非常に稀」という、和菓子屋の創業に挑戦されたお二人のストーリーと、起業の心得を伺ってきました。

「wagashi asobi」のコンセプト

「一瞬一粒(ひとつひとつ)に想いを込めてつくる。」ことを理念にしている。また、「地面に近い」お菓子作りを意識しており、色素や香料を使わないお菓子作りを心がけている。店に並ぶのは、「ハーブのらくがん」と「ドライフルーツの羊羹」の2品のみ。

和菓子の「原点回帰」

お二人の経歴を教えてください。

稲葉さん
高卒で大手の和菓子屋さんに入社し、のべ20年働いていました。銀座や赤坂のお店の勤務を経て、NYでも6年間働いていました。
浅野さん
私は、京都の老舗の和菓子屋さんでの経験を経て、稲葉と同じ和菓子屋さんに就職しました。そこで意気投合し、2人で独立することにしました。
稲葉さん
「wagashi asobi」は創業8年の和菓子屋なのですが、和菓子業界で職人が独立して創業するのって他に例がないんですよ。

え、そうなんですか?

稲葉さん
そうなんです。老舗の和菓子屋さんが別のブランドを作ることはあっても、なかなか職人が0→1でお店を始めるケースはありません。和菓子屋さんを創業したことのある人が少ない中で、wagashi asobiは新しいことをやっているように見られがちですが、実は「原点回帰」に挑戦しています。
小さなお店で少ない人数で、絞った商品なのは、京都の老舗の和菓子屋さんを手本にしています。店の名前よりお菓子の名前のほうが有名で、その街でしか買えないお菓子。街と関わりながら街の人に支えてもらえるお店を目指して、この長原という場所でやっています。

現代を生きる和菓子職人として

今っぽさやアート性を感じますが、現代風にアレンジしているんですか?

稲葉さん
そのようには考えていません。お菓子は変化していくのが必然だと思うんです。でも、和菓子屋さんって、昔ながらのものを作るのが和菓子であって、新しいことをやると「和菓子ではない、和洋菓子である」と言われてしまうことがあります。僕は、自分の目の前にいる人が喜ぶお菓子を、自分の技術や知識を使って作ることが、和菓子職人が本当にやらなければいけない仕事だと考えています。この時代に生きる和菓子職人として、この時代の人に喜ばれるのもを作りたい、という気持ちからスタートしています。

稲葉さんが使ってきたらくがんの押し型。かたちも様々。

稲葉さん
「和菓子」という言葉は、明治維新のときに、西洋のお菓子が作られるようになって出来た言葉なんです。それまではただの「菓子」だったのに、「洋」が入ってきたことで「和」になった。その言葉が出来たせいで、和菓子は発展を止めてしまったという解釈もあります。
和菓子は自然のものをそのまま食べていたのが、加工して神様にお供えするようになって、近くの人を喜ばせるために工夫をして発展してきました。その過程で、仏教と伝来した茶の文化や、キリスト教とともに砂糖が入ってきました。そのような、海外からの影響をうけた日本人が、自分たちの生活に合ったかたちにリメイクして日本の文化になってきたんです。だから和菓子は、自国だけではなく、いろんな文化を行ったり来たりしながら発展してきたものなんです。
現代に生きる自分たちは、海外の人と情報や流通のやりとりをするのが当たり前になりました。そんな自分たちが出来ること考えたときに、世界各地のいい素材を取り入れて、目の前の人が喜んでくれるものを作れるといいなと思っています。
稲葉さん
独立したときに、僕たちがこの街で和菓子屋さんをすることで、街の人に喜んでもらわないと、街に浸透していかないと考えました。そこで、この街の手土産にしてもらえる「地元の銘菓」になりたいと考え、2人で一品ずつ自信作を出すことにして、浅野がようかんを提案し、僕がらくがんを提案しました。
(c)MIHO

製造はすべて手づくりでやっています。僕はこの街で育ったので、人に喜んでもらえるお菓子を作ることを通して、お店がある自分の街のことも好きになってくれる人が増えれば、この街の役に立てるお店になるのかなと思います。

お菓子作りの哲学や、お店の経営者としてのスキルはどうやって培われたのですか?

稲葉さん
素材にこだわることに関しては、ただの食いしん坊です(笑)。おいしいものを食べたいと突き詰めていくと、素材そのものの味が一番おいしいと感じるので、自然と地面に近い食材を求めるようになったのだと思います。
経営に関しては、僕が和菓子屋さんに就職したのがバブルの最後の年で、翌年からの就職氷河期のなか入ってきたのが有名私大を卒業した後輩たちだったんです。僕は高卒で入社したので、18歳のときに年上のすごい大学を出た人たちの先輩になりました。1年先に入社したので、仕事面では勝てても、会話がなかなか噛み合わず、劣等感があったんです。そこで、ビジネス書を読み漁り、マネジメントからマーケティングまで、ビジネスのあらゆることを勉強しました。それが今に活きているんだと思います。

若いころに重ねられた努力で今があるのですね。

稲葉さん
そうかもしれません。あと、人に決められるよりも、自分で決めたい方なので、自分たちでマネジメントをしていくことを常に考えています。
浅野さん
20年間のサラリーマン生活ののちにやっと独立して、自分たちのルールで仕事ができるとなったときに、決まりごとを少なくしたいという想いがあって、自由にやっています。自分でハンドルを握ることで、いいゆとりも生まれてくるのだと思います。

今はフリーランスで活動される方も多く、自由な半面、自分で管理することが甘くなりがちと聞きますが…。

稲葉さん
僕は管理が甘いです。
浅野さん
好きで始めたことなので、逆に当初は休みらしい休みをとっていなくて、何か月も働いてしまうということもありました。
稲葉さん
好きだからこそどこまでも働けてしまうので、いまは自分が満足できる給料を決めて、それ以上無理をせずに仕事をするようにしています。

お二人でお仕事をされていて、うまくいく秘訣は?

浅野さん
素直に思ったことをなんでも言うことです。
稲葉さん
言われたことは我慢してやること、ですかね…(笑)。
浅野さん
経営の方向性が合っているので、同じような価値観でお互いに仕事ができていると思います。ゴールが一緒だからこそ、一緒に頑張って行けるのだと思います。

『わがしごと』
著者:wagashi asobi
編集発行:コトノハ
並製本 頁数:210ページ
本体価格:1900円+税(税込価格:2052円)

取材を終えて

前例のないことに挑戦し続けられているお二人。その背景にある、「現代の和菓子職人」としての想いを感じることができました。職人さんだけでなく、独立起業を考えている方にとっても、有益なお話をお伺いできたと思います。稲葉さん、浅野さん、ありがとうございました!

【今回お話を伺ったのは】
wagashi asobi 稲葉基大さん
浅野理生さん

所在地 東京都大田区上池台1-31-1-101
電話番号 03-3748-3539
営業時間 営業時間 10:00~17:00 定休日:不定休
■wagashi asobiの公式サイトはこちら
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