20代こそ日本酒を。~杜氏と蔵人の想いを伝えたい~

2018 / 07 / 05
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石川酒造株式会社 営業部 広報デザイン担当 石川雅美(いしかわまさみ)さん 

皆さん。日本酒の「大吟醸」や「純米酒」といわれて、説明できますか?知らずにお酒を飲まれている方が多いのではないでしょうか。150余年の歴史を持ち、東京の福生市に蔵を構える石川酒造株式会社。本日は広報の石川雅美さんにお話をお伺いしました。

お米を研ぎ澄ませたお酒はきれいな味で飲みやすい

飲みやすい日本酒はどのような特徴がありますか?

石川さん
「もし、あなたが今日初めて日本酒を飲むとしたら…?」そんな日本酒初心者の方が「飲みやすい」のは一般的に「よくお米を磨いたお酒」=「精米歩合」と言われる数字が少ないお酒かもしれません。目安としては精米歩合60%以下くらいでしょうか。
お酒を造る時には、お米を「磨く」作業があります。精米歩合とは、お米のまわりを削って、残った部分の量が書き表されています。数字が少ないほどたくさん磨いたということです。(たくさんまわりを削り取ってしまうのでお値段は高くなります)
日本酒はお米の中のでんぷんが麹(こうじ)の働きで糖分に変わり、その糖分を酵母の働きでアルコールに変えて出来上がります。
食べて美味しいお米と、お酒造りに向いているお米は違って、お酒造り向きのお米は「酒米(さかまい)」と呼ばれ、中心にでんぷんが固まっているので、磨くほどでんぷんだけが残る仕組みです。

そうするとシンプルに発酵できるので邪魔な味がない「きれい」な味になるのです。
逆に、日本酒を飲んだ時に気になる香りや、もやっとする邪魔な味は「雑味(ざつみ)」と言われます。雑味があると「クセ」が強くて嫌だな、と感じるかもしれません。
ですが!ちょっと上級者になってくると、その「クセ」が「心地良い個性」と感じられるようになります。より複雑な味が感じられる「個性のあるお酒」が飲みたくなってきたら、精米歩合の数字が大きい日本酒にも挑戦してみてください。こちらはお値段もお求めやすく気軽に楽しめるものが多いですよ。
日本酒は、お米の種類、お米の磨き具合、造り方、造られる地域によって味わいが全く変わります。近くのお店だけじゃなく旅先などでも、いろいろ試してみて欲しいです。いつかきっと大好きな味に巡り会えます。

違いはお米の磨き?「吟醸・大吟醸」

よく耳にする「吟醸」や「大吟醸」はお米を磨いた割合(精米歩合)によって分類される呼び方です。吟醸は精米歩合60%以下、大吟醸は50%以下で、さらに「吟醸造り」という時間と手間暇のかかる造り方をした日本酒だけがあてはまります。通常の造り方よりもゆっくり丁寧に造るので、繊細で上品な味が楽しめます。

原材料による呼び名「純米」

米と米麹のみで造る日本酒を純米酒と呼びます。純米酒は、お米の本来の美味しさや甘みが伝わるものが多いです。
では、純米酒ではないお酒には何が入っているのかというと「醸造アルコール」(お酒造り用のアルコール)が添加されています。醸造アルコールが入ると、より香りを感じる、キレのある味になるという効果が出ます。
純米派の人も、そうでない派の人もいるので、どちらが良いとは言い難いです。

どう造っているかがわかる「生酒・原酒」など


日本酒は造り方でもいろいろな呼び名で呼ばれます。
普通は2回熱処理(味を決める1回目、品質安定のための2回目)をして出来上がる日本酒、一度も加熱処理をしなかったら「生酒」です。熱処理をしていないということは、酵母が生きているので、クール便で運ばなければならないですし、保存も冷蔵庫で行います。手間はかかりますが、フレッシュで元気の良い香りを楽しむことができると思います。
造る工程の中に、もろみを搾って日本酒と酒粕にする「上槽(じょうそう)」という作業がありますが、この搾った後に水を足さないものは「原酒」といいます。水を足していないのでアルコール度数が高くトロっとしています。なので、ロックで飲んだり、水を足して飲んでもいいんです。氷を入れると氷の溶けた層と溶けていない層があったりして、飲み方の工夫で違った楽しみ方もできますよ。
この他にも「山廃」「あらばしり」「ひやおろし」「にごり酒」「しずくどり」「生貯蔵酒」などの呼び名がたくさんあって難しいですが、飲んで美味しかったものだけ覚えれば良いと思います。

あとは全部詰め込んで呼ぶだけ

「純米大吟醸生酒」「純米吟醸原酒」など、難しい漢字が並びますが、実は全て「こうやって造りました」って書いてあるだけなんです。覚えてしまうと味の予想ができて、その予想が当たっても、時にはハズレても面白いのが日本酒です。

日本酒を造る蔵を覗く

石川酒造でお酒を造っている場所はどのようなところですか?

石川さん
私たち石川酒造は、明治13年に建てられた蔵の中で日本酒を造っています。土壁の上に漆喰などを塗って仕上げた「土蔵造り」という蔵で、湿気がこもらないので真夏でも中はひんやりしていて涼しいです。一定の温度を保ちやすい土蔵は日本酒造りに最適なんです。
大手酒造メーカーさんに多いのが「四季醸造」。これは空調設備が整った工場で造ることができるため、1年中安定してお酒が造れるというやり方です。私たちは昔からの伝統を引き継いで「寒造り(かんづくり)」という造り方を行います。新米の出る秋、9月頃から作り始めて、4月中頃にその年のお米を仕込み切ったら終わりにします。より寒い方が日本酒造りに向いているからです。
そうすると必然的に「旬」の日本酒が出来るのです。10月末にはその年最初の日本酒が出来上がり、「新酒」として出荷します。その後、11月~GW明けくらいまでは常に出来たての日本酒があるので、敷地限定で量り売りを行っていますよ。新酒はフレッシュで活きがよくて、ちょっと荒削りな仕上がりです。
また、搾りたて以外にも杜氏がわざと日にちを置く(寝かせる・熟成させる)ことで、味を変化させて出来る日本酒もあります。熟成させると、だんだんまろやかになって、穏やかな風味、奥行きのある味わいに変化してゆきます。夏が終わる頃に「ひやおろし」と呼ばれる1年近く寝かせた日本酒が旬になったりします。
私たちの蔵では寝かせる期間は半年から2年。「この味」と見極めるのは造り手の責任者である杜氏(とうじ、とじ)で、その時が来たら日本酒は蔵のタンクから瓶詰めされて、皆さんのお手元に届くのです。

意外と知らない「酒米」

日本酒の原料のお米はどんなお米でもできますか?

石川さん
できることはできます!私たちが食べているごはんのお米でも造れます。ただ、日本酒を造るのに良いお米の品種があって、これを酒米(さかまい)と言います。皆さんがよくご存知の「山田錦」は実は酒米の品種なんです。
酒米はお米の中央に「心白」というでんぷん部分があり、粒が大きいのが特徴です。お米によってもちろん味も変わるので、マニアになるとお米の違いで飲みわける方もいらっしゃるほどです。

昔の習わしを継承し続ける

蔵の前に飾られている飾りにはどんな意味がありますか?

石川さん
これは杉玉(すぎだま)、酒林(しゅりん)などと呼ばれる、その名の通り杉で作る「造り酒屋の看板」です。
皆さん奈良の大神神社(おおみわじんじゃ)はご存知ですか?
お酒の神様として有名な神社です。そして、大神神社のご神木は杉で、昔は神様のご加護を得て、無事で事故無くおいしいお酒が作れますようにと願い、造り酒屋の軒先に吊す風習が生まれたともいわれています。
杉には抗菌作用があり、蔵の入り口に吊るすことで、入り口から悪い菌が入らないように吊しているという説もあります。
毎年、新酒ができると青々とした新しい杉玉にかけかえます。
杉玉は自分たちで手作りして、杜氏がかけかえをしています。
今は日本酒に力を入れてらっしゃるお店や飲食店でもよく見かけられるようになりましたよね。
青かった杉玉の色が変わっていくことで、新酒でできた日本酒の熟成を感じる人もいます。

意思を受け継ぎ挑戦をする

石川酒造のビール造りにはどんな思いがありますか?

石川さん
石川酒造では、1887年に一度ビール醸造をしていました。その当時、明治時代に使っていた釜が今でも敷地に残っています。
明治期のビール造りは大変で、冷蔵技術もなく、輸送手段も今のように発達していなかったため、味にばらつきが出てしまったり、運送の際に瓶が破裂してしまう事があり、1期造ってすぐ断念しました。
しかし、その意思を受け継ぎ、当時叶わなかったことを1998年に実現、ビール醸造を復活させたのです。そして、同時に出来立てのビールが飲めるレストランをオープンしました。
ビール造りを再開する時に、いろいろな場所へ視察に行きました。印象的だったのがカナダやヨーロッパの小さい醸造所です。地元の人たちが集まって、お酒を楽しみながら、おしゃべり(情報交換)をしているんです。石川酒造のオーナー石川家も江戸時代から地域のリーダーをまかされ、土地の人々と触れ合ってコミュニケーションをとり続けてきた家だったので、改めてそこを目指すためにも、レストランという新しい形を取り入れて地元の人たちが集える場所にしたいと考えたのです。

最近は「クラフトビール」というカテゴリーのビールが人気になっていますが、聞いたことはありますか?
日本では小規模の醸造所で、こだわりをもって造るビールのことをクラフトビールと呼びます。そのビールのスタイルは各醸造所ごとたくさん種類があって、世界のいろんなタイプのビールが日本でも飲めるようになりました。
そのたくさんのビールは、ものすごくおおまかに分類すると「ラガー」と「エール」にわけられます。(もちろんどちらにも入らないタイプもあります)
ラガーは日本で昔から親しまれているスッキリタイプ、エールは華やかだったりフルーティーな香りをより感じられるタイプが多いです。実は、味わいに合わせてグラスを選ぶと、より美味しく感じることもできます。
また、石川酒造でも年間10種類以上の様々なタイプのビールを造っています。苦味が控えめのタイプや、柑橘系の印象的な香りのするものなど、飲んだことのないようなビールが味わえるかもしれません。ぜひ飲んでいただきたいです。

取材を終えて

お酒の種類を普段聞いていても分からないままでしたが、分かったうえで飲むことで、蔵人さんの苦労や、杜氏のこだわりを感じることが少しでもできるのかなと思いました。日本酒離れなんてもったいない!20代こそ日本のお酒を飲みましょう!
取材のご協力ありがとうございました。

【今回お話を伺ったのは】
石川酒造株式会社 石川雅美さん
住所 東京都福生市熊川1番地
石川酒造株式会社HPはこちら
石川酒造オンラインショップはこちら

ライター・カメラマン/小宮しほり(しほりん)

都会育ちのミーハーガール!スキマ時間はひたすらインスタ。でも好きな食べ物はカリカリ梅。
WIZOOM編集部の末っ子しほりんです!

【小宮しほり(しほりん)】の記事一覧

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